見えない広告?「選択的注意」という脳の仕組み
人は、五感から入ってきた情報すべてを感じ取っているわけではありません。
人の脳は、興味のある情報や「重要」と判断した情報を優先的に処理して、 その他の情報は無意識にシャットアウトしています。このような脳の働きを「選択的注意」といいます。
ではこの選択的注意によって、具体的にどのようなことが起きるのでしょうか?
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選択的注意の身近な例
選択的注意の身近な例で「カクテルパーティー効果」というものがあります。あなたには次のような経験はありませんか?
- 人の多い賑やかな場所でも、自分の名前が呼ばれたら気づいた。
- 電車に乗っているとき車内アナウンスを聞いていなくても、 降りる駅名がアナウンスされたら気づいた。
このように、自分に関する情報や、興味のある情報に自然と意識が向く現象を「カクテルパーティー効果」といいます。
この心理効果は広告にも関係があります。
広告のメッセージは「どなたでも」というターゲットを絞らないものよりも、「●●でお困りの方」や「30代からの化粧品」といった、ターゲットを絞ったメッセージの方が反応が得られる、と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
選択的注意の動画にチャレンジしてみよう!
選択的注意に関する実験動画があります。
動画では、白ユニフォームのチームと黒ユニフォームのチームがボールをもち、パスをし合っています。
さて問題です。動画の中で白ユニフォームのチームが何回パスするか、数えられますか?
この記事の続きを読むとネタバレになりますので、ぜひ続きを読む前にチャレンジしてみてください!
■ハーバード大学特別実験「選択的注意テスト」
白チームが何回パスしたか、分かりましたか?
正解は15回なのだそうです。
では別の質問です。ゴリラには気づきましたか?
動画開始25秒ごろ、ゴリラの着ぐるみを着た人が現れ、胸を叩いた後に去っていきます。ハーバード大学でこの実験を行ったところ、なんと半数もの被験者がゴリラに気づかなかったそうです。
気づかなかった方は、ぜひもう一度見返してみてください。
人の脳は、興味のある情報は優先して処理し、逆に、興味のない情報や重要性の低い情報はシャットアウトする仕組みになっているそうです。
この実験では「パスを数える」ことに脳が集中し、その他の情報がシャットアウトされるため、ゴリラに気付かない現象が起きるのです。
選択的注意は広告でも
「視界に入る」ことと「見える」ことは別で、人は興味の無い物は意外と見えていないのだということが分かる実験でした。
同じ現象は広告でも起こります。
ユーザーに「商品/サービスのことをもっと知りたい」と思ってもらえれば、広告の細かい部分まで読んでもらうこともできます。しかしその前に、まず脳に「興味がある情報だ」と判断されなければ、広告が視界に入っても「見てもらうこと」すらできません。
だからこそ、キャッチコピーで内容や訴求ポイントを端的に伝えたり、内容やターゲットにマッチしたデザインで興味をひいたりすることが大切です。
また、ただ面白さやインパクトを追求するだけでは「広告は印象に残ったけど、肝心の商品は印象に残らない」状態に陥らせてしまう可能性がありますので、商品自体が印象に残るようにする必要があります。
人間は五感から入る情報すべてが見えたり、聞こえたりしているわけではありません。広告も、それを前提に考えなくてはいけませんね。